ICANOF第13回企画展『笹岡啓子 ——— 種差 ninoshima』

2015年 8月22日(土)~9月13日(日)
10:00~18:00(最終日のみ閉館16:00)
計21日間/入場無料 休館日:8月31日(月) ・9月7日(月)

八戸市美術館

企画・主催:市民アートサポートICANOF(代表 米内安芸)
キュレーター:豊島重之
共同主催:八戸市美術館(tel. 0178-45-8338)
協賛:(株)キタムラ・フォートセンター惣門・サンフレンド・studio hypnos・ダンスバレエリセ
後援:Be FM・東奥日報社・デーリー東北新聞社・八戸学院大学・八戸市文化協会・〈八戸学院大学・八戸学院短期大学地域連携研究センター〉
問合せ:ICANOF 090-2998-0224
icanof8@gmail.com  http://icanof.parallel.jp/ 
031-0022 八戸市古常泉下14-18

展示概要

1F ▶ 笹岡啓子《Century of the Shore》スチール・プロジェクション
2F ▶ 笹岡啓子《PARK CITY》をメインとした写真展示

©SASAOKA Keiko(上2点とも)

広島平和記念資料館の御厚意により、種差の鳥瞰図絵師、吉田初三郎作の連図『HIROSHIMA』の下絵の一部(同館所蔵)を閲覧・接写する、笹岡啓子(手前)
2015年5月、広島平和記念資料館にて ©ICANOF

笹岡啓子 SASAOKA Keiko
写真家。広島県生まれ。
林忠彦賞受賞の『Remembrance』連作や東京都写真美術館「この世界とわたしのどこか」展や青森県立美術館「種差 よみがえれ 浜の記憶」展などで、いま最もアクチュアルな航跡を刻む写真家。
主な写真集に『PARK CITY』(2009) ・『EQUIVALENT』(2010) ・『FISHING』(2012) ほか。2012年より被災地の写真を主とした『Remembrance』(全41号)を刊行。
受賞歴:2008年VOCA展奨励賞・2010年日本写真協会賞新人賞・2012年さがみはら写真新人奨励賞・2014年第23回林忠彦賞。

▶ 関連書「photographers’ gallery press no.12《爆心地の写真 1945—1952》」2500円+税。会期中、受付にて、本展テーマを導いた「爆心地の写真をめぐる論考」が収録された貴重な一冊を紹介。

3F ▶ 佐藤英和《tanesashi/ninoshima 2015》常設上映

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原爆ドームの夜(左)と昼下がり(上)、基町アパート(下)
©SATO Hidekazu(3点とも)

爆心地の近隣には、家族・職場はもとより衣食住を失った大勢の被爆者が身を寄せ合って混住する他なかった。百万人もの軍都ゆえ多言語的・多文化的「原爆スラム」。国際平和公園都市ヒロシマ建設のため、このスラムが真っ先に排除され、強制移転した先が、この「基町アパート」いわば天空の城「ポリグロッタ」である。(Toshima)
佐藤英和 SATO Hidekazu
映像ディレクター。京都府生まれ。
主な映像作品に『CAN OF ICANOF(イカノフの缶詰)』・『北島敬三 2013』・『矢野静明 2014』ほか。
1998年、瀬戸内海 佐木島での「モレキュラー演劇ワークショップ」を撮影、そのドキュメント上映を実現。
2015年、爆心地広島と1万人もの被爆者が収容された離島「似島/にのしま」の、70年後の雷鳴と驟雨を追う。

>>本展パンフレット
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口の島、口の荒ぶる馬の島、馬の眼に火柱が二度走る島、二の島――――
  タネサシと名ざされるその前夜、そこはニノシマと呼ばれていたらしい

広島湾をはじめ瀬戸内海の島々を望む、ニノシマの遠浅の磯づたいには(沖に仕掛ける牡蠣養殖イカダ・筏と異なる)「ヒビ・篊」と呼ばれる牡蠣養殖ダナ・柵が目を惹く。「ヒシ・干州」から「ヒビ・篊」の豊穣へ。竹冠に洪(溢れ満ちるさま)と書くヒビは、カキの胞子・胚子を付着させ稚貝を成長させるための海中の竹組み・サクを示す。

広島湾をはじめ瀬戸内海の島々を望む、ニノシマの遠浅の磯づたいには(沖に仕掛ける牡蠣養殖イカダ・筏と異なる)「ヒビ・篊」と呼ばれる牡蠣養殖ダナ・柵が目を惹く。「ヒシ・干州」から「ヒビ・篊」の豊穣へ。竹冠に洪(溢れ満ちるさま)と書くヒビは、カキの胞子・胚子を付着させ稚貝を成長させるための海中の竹組み・サクを示す。

右から写真家笹岡啓子、映像収録する佐藤英和、左端に、ただ茫然とヒビを仕掛けた遠浅のイソを眺める豊島重之。

右から写真家笹岡啓子、映像収録する佐藤英和、左端に、ただ茫然とヒビを仕掛けた遠浅のイソを眺める豊島重之。


文中に言及される種差岩礁の「地獄穴・馬捨て場」にとてもよく似た、ニノシマの「地獄穴?」。

文中に言及される種差岩礁の「地獄穴・馬捨て場」にとてもよく似た、ニノシマの「地獄穴?」。


1990年になってニノシマ内の宅地に「旧陸軍運輸部・馬匹(ばひつ)検疫所」焼却炉遺構が発掘された。14万人もの被爆死者のうち、このニノシマにも1万人もの被爆者を爆心地から砂利浚渫(しゅんせつ)船で移送搬送、しかし応急手当の甲斐もなく死者続出、遺体安置所も満杯超過、悲惨にもこの馬匹焼却炉でやむなく火葬されたともいう。

1990年になってニノシマ内の宅地に「旧陸軍運輸部・馬匹(ばひつ)検疫所」焼却炉遺構が発掘された。14万人もの被爆死者のうち、このニノシマにも1万人もの被爆者を爆心地から砂利浚渫(しゅんせつ)船で移送搬送、しかし応急手当の甲斐もなく死者続出、遺体安置所も満杯超過、悲惨にもこの馬匹焼却炉でやむなく火葬されたともいう。

海難慰霊・戦勝祈願の「荒神社・似島竃(かまど)神社」。1740(元文5)年創建。水神・多産神・芸能神の邇保(ニホ・乳穂・除厄のオニ)姫神を祀った「こうじんさん」。日清・日露戦争以来の軍神として、軍都百万・近代廣島の口火を切った。(Toshima)

海難慰霊・戦勝祈願の「荒神社・似島竃(かまど)神社」。1740(元文5)年創建。水神・多産神・芸能神の邇保(ニホ・乳穂・除厄のオニ)姫神を祀った「こうじんさん」。日清・日露戦争以来の軍神として、軍都百万・近代廣島の口火を切った。(Toshima)

(以上6点 ©ICANOF)
2013年三陸復興国立公園指定記念『北島敬三~種差 scenery 展』、2014年『矢野静明~種差 enclave 展』に引き続く〈種差シリーズ〉第三弾! 戦後70年のねじれた時空に黒々と「PARK CITY」を焼き込んできた第三の射手、笹岡啓子が放つ魔弾の行方は? 

むろん「PARK CITY」とは、狭義には平和公園都市ヒロシマのことだが、いまや復興公園都市フクシマをも指すようになったばかりか、限界集落をうわまわる消滅都市パニックの煽りをうけて、このくにの街という街がこぞって「PARK CITY」へと「レミング=地走り」しつつあるかのようだ。そこは無人の桃源郷? それも随処にコンビニと監視カメラが完備した無人の? 

見過ごしてはならない。笹岡の「PARK CITY」には、いつも図像のダークサイドへ、「写真の口」へと姿をくらましていく群影が写し込まれているのを。とはいえ、それが出口か入口かを、口は語らない。いっさい黙して語らないその口が、見るものを捉えて離さない。言葉を発しない身ぶり自体が裸性(らせい)の試練を発してくる。人称性を脱いだ「非人- 称」の、家畜ならぬ鬼畜の、いうなれば、動物に「まなざ」される試練。人々が見ない、世界が見ない、他者が(おそらくは神も)見ない、そこで初めて、写真の口が見る? 

厄災からの復興/復興と称する厄災。私たちの〈戦前・戦後〉はヒロシマから「まなざ」されるとともに、フクシマからも「まなざ」されている。その眼差しの光源はどこに見いだされるのか。三陸の浜づたいの北端に位置する風光明媚な種差岩礁。その種差を拠点とした鳥瞰図絵師 吉田初三郎が、原爆投下後の広島を歩き廻り、何日も聞き描きして仕上げた『HIROSHIMA』連図。現在、その下絵の一部は広島平和記念資料館に収蔵されている。そこにタネサシからヒロシマを、日本というシマジマを眺望しうる息も絶え絶えな視角・アングルが、いわば「瀕死角・急死角」が息を殺していたとは。

風光明媚な安芸小富士(あきのこふじ)で名高い広島湾内の離れ小島「似島/にのしま」。富士に「似る島」は、古来より異舶の遠見・潮見の要衝ゆえ「看る島」であった。荷継ぎ港「荷の島」には、いまも旧陸軍検疫所・被爆者収容・遺体安置所の痕跡が生々しい。古名「ニホ島・乳穂シマ」。豊穣多産のニホ神を祀った海難慰霊・戦勝祈願の荒神社と、イチキシマ弁財天を祀った蕪嶋神社との照応。ニノシマはあまりにタネサシの風致と似てはいないか。外方(げぼう)の鼻の釜の口、を引くまでもなく。似島の「馬匹(ばひつ)焼却炉」遺構が、種差の「馬捨て場=地獄穴」伝承と人知れず響き合っていたとは。

TOSHIMA Shigeyuki (ICANOF)


オープニング特別プログラム
8/22 Sat @2F講義室(聴講無料)
14:00~ ギャラリートーク[1]倉石信乃「孤島論――似島の位置」
15:00~ ギャラリートーク[2]東琢磨「ササオカ・ノワール」
16:00~ トークセッション[3]笹岡啓子・鵜飼哲・東琢磨・倉石信乃
     「写真の口・写真の鼻/タネサシからニノシマへ」
18:00~ オープニングパーティ@八戸グランドホテル
※出品作家やトークゲストの皆さんを囲んでの和やかな懇親会です。会費 6000円。参加ご希望の方はお気軽にお問合せください。
問合せ:ICANOF 090-2998-0224
icanof8@gmail.com http://icanof.parallel.jp/
031-0022 八戸市古常泉下14-18

8/23 Sun @2F講義室(聴講無料)
13:30~ 上映会+トーク[4]佐藤英和・東琢磨・鵜飼哲
     「裸性(らせい)を着た/脱いだ、瞬膜(しゅんまく)のスクリーン」
14:30~ トークセッション[5]鵜飼哲・笹岡啓子・倉石信乃・東琢磨
     「〈動物である〉ことを学ぶ、終(つい)に(仮題)」

トーク講師
東琢磨 HIGASHI Takuma
音楽・文化批評。広島県生まれ・在住。
ヒロシマ平和映画祭実行委員、連続ティーチ・イン沖縄実行委員、成蹊大学講師などを勤め、近年は東北の被災地での講演にも招かれ、日本中を飛び回っている。
主著に『全−世界音楽論』(2003)・『国境を動揺させるロックン・ロール』(1998)・『ラテン・ミュージックという「力」』(2003)・『ヒロシマ独立論』(2007)・『ヒロシマ・ノワール』(2014) ほか多数。

ukai
鵜飼哲 UKAI Satoshi
フランス文学・思想。一橋大学大学院教授。
主著に『ジャッキー・デリダの墓』(2014)・『主権のかなたで』(2008)・『応答する力』(2003) ほか多数。
訳書・共訳書にジュネ『恋する虜』(1994)・『シャティーラの四時間』(2010)・『公然たる敵』(2011)、デリダ『盲者の記憶』(2003)・『生きることを学ぶ、終に』(2005)・『ならず者たち』(2009) ・『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』(2014) ほか多数。

kuraishi
倉石信乃 KURAISHI Shino
写真史・近現代美術史。明治大学大学院教授。
横浜美術館学芸員時代に「ロバート・フランク ムーヴィング・アウト展」(1995)・「中平卓馬 原点復帰 ―横浜 展」(2003) ほかキュレーション。
著書に『反写真論』(1999)『スナップショット』(2010)。共編著に『明るい窓:風景表現の近代』『失楽園:風景表現の近代』ほか。
論考「不鮮明について 松重美人の写真、最初の1枚」が、2015年3月モレキュラー《スヴァールバル~種子の方舟》公演(青森県立美術館主催)に引用される。

2011norishiro_toshima
豊島重之 TOSHIMA Shigeyuki
モレキュラー演出家。美術展キュレーター。
主な舞台に『Ohio/Catastrophe』(シアタートラム)・『nori-shiro』(座 高円寺)・『Decoy』(沖縄県立美術館)・『nino-maii bis』(八戸市美術館)・『Svalbard Vault:Vehicle for Seeds』(青森県立美術館)ほか。
主な編著・共著に『飢餓の木2010』・『ドゥルーズ 千の文学』・『種差の世紀/種差四十四連図』ほか多数。

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