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書評・ICANOF2009新刊『露口啓二写真集』/前田恭二

讀賣新聞日曜版(2009年12月20日付け)書評欄より転載
 

祝津/Syukudu/sikutut-us-i(えぞねぎ=wild onion) 2001 2001 ©TSUYUGUCHI Keiji

祝津/Syukudu/sikutut-us-i(えぞねぎ=wild onion) 2001 2001
©TSUYUGUCHI Keiji

 風景写真の欄外には、しばしば日付と地名が付記される。それ抜きではいつどこなのか分からない、あいまいなイメージに過ぎないからだ。日付と地名が付記されることで、初めて風景の同一性は確かなものになる。
 札幌在住の写真家、露口啓二の〈地名〉シリーズは、そこに揺さぶりをかける。地名の漢字・ローマ字表記、その起源となるアイヌ語のローマ字表記と意味が併記される。しかも撮影地を再訪し、視覚をずらした別カットを撮る。通常、その2点は横方向に並置される。
 日付と地名の重層化。そこを別の言葉で呼んだ人々のまなざしが呼び込まれ、何気ない風景とそれを眺める私の視線を動揺させる。
 青森県八戸市で先鋭な芸術活動を続けるグループICANOF(イカノフ)が、露口を展覧会に招いたのを機に、写真集を発行した。他のシリーズを含む300点を収録。(ICANOF 問合せ=0178・45・9247、税抜き価格=2381円)

執筆=讀賣新聞美術部・前田恭二

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